2010年6月1日

イーソル株式会社

金星探査機「あかつき」に T-Kernelベースソフトウェアプラットフォーム「eCROS」が採用


金星探査機 「あかつき」 イメージ図 小型ソーラー電力セイル実証機
「IKAROS」 イメージ図
画像提供:池下 章裕 氏 (「あかつき」イメージ図)、宇宙航空研究開発機構(JAXA) (「IKAROS」イメージ図)


イーソル株式会社 (本社:東京都中野区、代表取締役社長:澤田勉、以下イーソル) は、T-Kernel ベースソフトウェアプラットフォーム 「eCROS」 が、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が5月21日に打ち上げた金星探査機 「あかつき」 と小型ソーラー電力セイル実証機 「IKAROS (イカロス)」 に採用されたことを発表します。イーソルは、eCROS の提供を通じて、これら宇宙機システムの信頼性と品質の確保、および短期間、低コストでの開発実現に寄与しました。eCROS は、今後打ち上げが予定されているさまざまな人工衛星や探査機などにも採用される見込みです。

あかつきには、赤外線から紫外線までの異なる波長の光を捉え、金星の様々な高度の大気の様子を撮影する 5台の観測カメラが搭載されていますが、そのうちの 4台を制御する統合計算機 (DE : Digital Electronics) のリアルタイムOS として、eCROS の中核をなすリアルタイムOS 「eT-Kernel」 が使われています。この統合計算機は観測カメラのシーケンス制御のほか、撮影した写真の機上データ処理やデータ記録などを行います。さらに、IKAROS の帆 (ソーラーセイル) の展開・制御などを行う計算機にも eT-Kernel が搭載されています。これらの計算機には、宇宙機システム搭載コンピュータのための 「Space Cubeアーキテクチャ」 の技術が生かされています。また計算機のアプリケーションの一部は、eCROS の開発ツール 「eBinder」 を利用して開発されました。

あかつきは、5台の観測カメラを駆使して金星の大気の三次元的な動きを連続的に調べ、金星の気象学を確立することを目的とした探査機です。金星は、大きさや質量、太陽からの距離などの点で地球と似ていることから、地球の兄弟惑星とも称されます。しかし大気の 96%を構成する二酸化炭素の温室効果で地表面は約 460℃、気圧は約 90気圧という高温・高圧の環境であり、また硫酸の厚い雲で覆われているなど、金星の環境は地球のそれとまったく異なります。金星の気象を調べて地球との違いが分かれば、地球の誕生や気候変動を解明する手がかりが得られると期待されています。あかつきは、打ち上げ後半年をかけて 2010年12月に金星軌道に到着し、2年間以上観測を続けることが予定されています。また、小型ソーラー電力セイル実証機 「IKAROS (イカロス)」 は、宇宙空間で帆を広げ、太陽の光を受けて太陽系を航行できること、さらに、帆の一部に貼り付けた薄膜太陽電池で発電できることを世界で初めて実証することが目的とされています。

宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 プラネットCプロジェクト 主幹研究員
Planet-Cプロジェクト・ファンクションマネージャ 鈴木 睦 様のコメント

「eT-Kernel は、昨年打ち上げられた 「小型実証衛星1型」 に搭載の超小型宇宙実験プラットフォーム 「スペースワイヤ実証モジュール (SWIM)」 に採用されたリアルタイムOSということで、今回あかつきと IKAROS にも信頼性や品質、性能面において安心して採用することができました。また eCROS は eT-Kernel に加えて、eT-Kernel に特化した開発ツールや、充実したプロフェッショナルサービスがプラットフォームとして整備されていたため、効率的な開発を実現できました。」

イーソル株式会社 常務取締役エンベデッドプロダクツ事業部長 上山 伸幸 のコメント
「先日打ち上げられたあかつきと IKAROS に、昨年の SWIM に続いて eCROS を採用していただき、大変光栄です。世界からもその成果が期待されているあかつきと IKAROS の重要な役割を担う統合計算機に
eT-Kernel が搭載されたことで、感動とともに気の引き締まる思いを感じています。今後もより優れたソフトウェアプラットフォームの開発を継続し、宇宙機システム開発の信頼性と品質の確保と効率的なソフトウェア開発を強力に支援してまいります。」


<参考>
● 2009年6月5日発表 「T-Kernel ベースソフトウェアプラットフォーム 「eCROS」 が採用された人工衛星が宇宙へ」
  http://www.esol.co.jp/company/press/emb_press090605.html
● 2006年6月20日発表 「次世代の宇宙機器開発用プラットフォーム 「SpaceCube Ⅱ」 に、イーソルの
T-Kernel とソフトウェア開発環境が標準採用」
  http://www.esol.co.jp/company/press/emb_press060620.html

▽ 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) ウェブサイト : http://www.jaxa.jp/
▽ あかつき特設ウェブサイト : http://www.jaxa.jp/countdown/f17/index_j.html



<補足資料>

■ eCROS について
eCROS は、イーソルのコア技術を注入したリアルタイムOS をベースとするソフトウェアプラットフォームです。eCROS により、ソフトウェア共通化によるコスト削減および開発期間短縮と、システムの信頼性確保を支援します。マルチコアプロセッサもサポートする T-Kernel 拡張版 「eT-Kernel」 と μITRON4.0仕様準拠 「PrKERNELv4」 を中心に、開発ツール 「eBinder」、ネットワーク/ファイルシステム/USB/グラフィックスなどの豊富なミドルウェアに加え、製品サポートや受託開発などを含むプロフェッショナルサービスで構成されています。動作検証があらかじめ済んでいるので、チューニングやカスタマイズなどの必要なく、すぐに動作します。ソフトウェアだけでなく、ニーズに合わせたプロフェッショナルサービスをあわせてご提供することで、開発者がアプリケーション開発に専念できる環境を作ります。eCROS は、カーナビやデジタル家電に加え、航空・宇宙分野、FA機器、OA機器など幅広い分野で多くの採用実績があります。

「eCROS」 詳細




■ eT-Kernel について
eT-Kernel は、リアルタイムOS ベンダーであるイーソルがこれまで μITRON で培ってきたノウハウと技術をもとにして、T-Engine フォーラムが配布するオープンソースの T-Kernel に性能面・機能面で改良・拡張を加えた T-Kernel の拡張版です。システム起動時間の大幅短縮、高速な割込み応答性、タスク切り替えの高速化、コンフィギュレーションによるメモリフットプリント調整機能、ハードウェア依存部のレイヤー化、
モジュール化による移植性の向上などを実現しました。eT-Kernel には、さまざまなシステム規模と用途をカバーするスケーラブルな4つのプロファイルがあります。μITRON と近い構成を持つ μITRON からの移行に最適な 「eT-Kernel/Compact」、eT-Kernel/Compact をベースに T-Engine 標準のデバイスドライバが付属した 「eT-Kernel/Standard」、メモリ保護機能とプロセスモデルをサポートする大規模開発に最適な 「eT-Kernel/Extended」、および POSIX に準拠した 「eT-Kernel/POSIX」 です。それぞれのプロファイル上で構築したソフトウェアを共通化したプロダクトライン型ソフトウェア開発も容易です。

「eT-Kernel」 詳細




■ eBinder について
eBinder は、T-Kernel、μITRONをコアとするシステム向けの開発スイートです。従来のT-Kernel/μITRON
ソフトウェア開発に不足していた、優れた開発環境を提供します。リアルタイムOS を使ったシステム開発のためにゼロから設計された開発ツール・機能群を使うことで、リアルタイムシステム特有の問題を容易に解決でき、リアルタイムOS を最大限に活用できます。eBinder は、C/C++コンパイラを含む各種開発ツール群と、あらゆる組込みソフトウェアのベースとなるターゲットプラットフォームを構成するモジュール群があわせて提供されます。

「eBinder」 詳細




■ イーソル株式会社について
イーソル株式会社は 「Inside Solution」 をブランドスローガンに、1975年の創業以来、組込みソフトウェア業界、および流通・物流業界で実績を重ねて参りました。ユビキタス社会を内側から支える技術者集団として、お客様の満足を第一に、開発、販売からサポートまで一貫したサービス、そしてトータルソリューションを提供しております。弊社は創業直後より 30年以上にわたって、高信頼かつ高性能の組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアを自社開発、販売し、デジタルカメラなどの情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムにいたるまで、数多くの組込みシステムに採用いただいています。日本市場のみならず、北米、ヨーロッパ、アジア市場向けに製品・サービスの販売活動を広げています。さらに、顧客様のシステムに特化した組込みアプリケーション開発やコンサルテーションも創業時より行っており、これら様々な規模のシステム開発実績による技術とノウハウの蓄積を背景としたサービスは、多くの顧客企業様より高いご信頼をいただいております。また、組込み技術の応用市場としての流通・物流業界においても、指定伝票発行用車載プリンタ、耐環境ハンディターミナル、冷凍庫ハンディターミナルなどの製品企画および販売を行い、高い評価をいただいております。

イーソル会社情報へ



*eBinder、eParts、PrKERNEL、PrKERNELv4、PrFILE、PrCONNECT、PictDirect は、
イーソル株式会社の登録商標です。
* eCROS、eT-Kernel、PrHTTPD、PrMAIL、PrSNMP、PrUSB、PrPCCARD、PrMTP は、
イーソル株式会社の商標です。
* TRON は "The Real-time Operating system Nucleus" の略称です。
* ITRON は "Industrial TRON" の略称です。
* μITRON は "Micro Industrial TRON" の略称です。
* TRON、ITRON、T-Engine、T-Kernel はコンピュータの仕様に対する名称であり、
特定の商品ないしは商品群を指すものではありません。
* 記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。



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