2011年11月15日
イーソル株式会社

イーソル、リアルタイムOS 「eT-Kernel」 の時間保護技術を開発



eT-Kernel 時間保護技術


イーソル株式会社 (本社:東京都中野区、代表取締役社長:澤田 勉、以下イーソル) は、イーソルが開発・販売するリアルタイムOS 「eT-Kernel」 の時間保護技術 「eT-Kernel Temporal Partitioning」 を開発したことを発表します。eT-Kernel Temporal Partitioning により、特定のソフトウェアによる CPU の独占を防ぎ、大規模なシステム統合の効率化と、組込みシステムのリアルタイム性と信頼性確保を支援します。分散開発型の大規模システム、高い信頼性が求められるシステム、マルチメディア機器などのインターネット接続機能を持つ機器などに最適です。

eT-Kernel Temporal Partitioning の発売は、2012年第2四半期を予定しています。それに先立ち、明日より開催される 「Embedded Technology 2011 組込み総合技術展」 (会期:2011年11月16日(水)~18日(金)、会場:パシフィコ横浜 [神奈川県横浜市]) のイーソルブース (ブース番号:C-17) にて、eT-Kernel Temporal Partitioning のデモ実演を行います。

大規模化する組込みシステム開発の効率化や部品コスト削減のため、オープンソース・ソフトウェアや、他部門や協力会社などが開発した多くのソフトウェアを統合し、システムを構築するケースが多くなっています。第三者が開発したソフトウェアを利用する場合、設計情報を詳細に把握することが難しいため、動作するタイミングや実際のふるまいと、必要な CPU 消費時間を正確に見積もるのは困難です。このため、どの処理をどの優先度で実行するか、といったシステム設計を、従来のタスクやプロセスの優先度設定だけで実現するのは、難しくなってきています。

さらに、第三者が開発したソフトウェアだけでなく、自身が開発したソフトウェアでも、すべての不具合を取り除くことが困難になってきています。また、インターネット接続機能の搭載により、ユーザによる開発元の分からないアプリケーションのダウンロードや、メールやウェブブラウザ経由のウィルス感染などの機会が増加しています。こうした信頼度が低いソフトウェアが予期せず CPU を独占してしまうと、OSを含むほかのソフトウェアが決められた時間までに処理を終えられなかったり、最悪の場合はシステムが機能不全に陥ってしまったりするような事態が起こります。

eT-Kernel Temporal Partitioning を導入することで、効率的にシステムを統合でき、さらにシステムのリアルタイム性と信頼性を確保できます。eT-Kernel Temporal Partitioning では、タスク/プロセスグループごとに、使用する CPU 時間を設定できます。あらかじめ設定された時間分は CPU を使用できることをOSが保証します。このとき、あるアプリケーションを構成するタスク/プロセス群をひとつのグループとして登録すると、そのアプリケーションの CPU 時間が保証されることになります。システム統合時には、このように利用することで、パフォーマンスの調整と保証が容易になります。CPU がアイドル状態になった場合は、所属するグループの CPU 時間が超過していても、実行可能状態のタスクが優先度順に実行されるため、CPU が最大限に活用されます。

タスク/プロセスグループを超えたタスク/プロセス間通信にも、通常の API を利用できるほか、既存のソフトウェアに手を加えることなくそのまま利用できるため、容易に eT-Kernel Temporal Partitioning を導入できます。また開発ツールは、eT-Kernel に特化した 「eBinder」 を利用できるため、個々のタスクとシステム全体の挙動を俯瞰的に捉えられるシステム解析ツールや、パフォーマンスチューニングに有用なプロファイリングツールなどを活用し、効率的に開発を進められます。

eT-Kernel Temporal Partitioning は、eT-Kernel のマルチコアプロセッサ対応版SMP型リアルタイムOS 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 と組み合わせることで、マルチコア上のコアグループ上のタスク/プロセスグループの時間も保証します。eT-Kernel は、マルチコアシステムの信頼性を確保するための技術として、カーネルや、タスク/プロセスグループをパーティションとして分離し、不正アクセスによるメモリ破壊を防ぐシステム保護機能 「eT-Kernel Multi-Core Edition Memory Partitioning」 を用意しています。eT-Kernel Temporal Partitioning とあわせて利用することで、メモリと時間両方を保護できるため、さらに安全なシステム統合と高い信頼性を実現できます。さらに eT-Kernel の最上位プロファイルで、高い Linux との互換性を持つ 「eT-Kernel/POSIX」 を利用する際には、ITRON ベースのリアルタイムソフトウェアと、Linux ソフトウェア資産を安全に統合できます。

イーソル株式会社 常務取締役エンベデッドプロダクツ事業部長 上山 伸幸 のコメント
「組込みシステムでも、第三者が開発したソフトウェアを多く用いた大規模なシステム統合を行うケースが増え、システム設計やパフォーマンス予測が複雑で難しいものになってきています。システム統合やインターネット接続機能の搭載に伴い、信頼度の低いソフトウェアの CPU 独占による他のソフトウェアの処理遅延なども重要な課題です。ソフトウェアの根幹をなすリアルタイムOSは、こうした課題を解決する重要なファクターの一つです。イーソルは、リアルタイムOSベンダーとして、これまでにリリースしたメモリ保護技術、システム保護技術に加え、今回開発した時間保護技術により、スムーズなシステム統合と信頼性を確保する強力な仕組みを提供し、組込みソフトウェア開発者を強力に支援します。」


<補足資料>

■ eT-Kernel について
eT-Kernel は、リアルタイムOSベンダーであるイーソルがこれまで μITRON で培ってきたノウハウと技術をもとにして、T-Engine フォーラムが配布するオープンソースの T-Kernel に性能面・機能面で改良・拡張を加えた T-Kernel の拡張版です。システムの高速起動を可能にする 「高速ブート」、複数ファイルシステムの透過アクセスを可能にする論理ファイルシステム (LFS)、システム稼動中の問題解析を支援する 「例外マネージャ」 などの多くの拡張機能を実装しています。マルチコア対応版 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 では、独自のスケジューリング技術 「ブレンドスケジューリング」 により、ひとつのシステム内でSMP型プログラムとAMP型プログラムを混在させられるほか、システム保護技術 「メモリパーティショニング」 により、マルチコアシステムの信頼性と品質確保を支援します。eT-Kernel には、さまざまなシステム規模と用途をカバーするスケーラブルな4つのプロファイルがあります。μITRON と近い構成を持つ μITRON からの移行に最適な 「eT-Kernel/Compact」、eT-Kernel/Compact をベースに T-Engine 標準のデバイスドライバが付属した 「eT-Kernel/Standard」、メモリ保護機能とプロセスモデルをサポートする大規模開発に最適な 「eT-Kernel/Extended」、および POSIX に準拠した 「eT-Kernel/POSIX」 です。それぞれのプロファイル上で構築したソフトウェアを共通化したプロダクトライン型ソフトウェア開発も容易です。eT-Kernel/POSIX は仕様で規定されているほとんどの800個近い POSIX API を実装しており、UNIX プログラミングでよく利用される fork、pthread、シグナルなどの機能も含みます。このため、Linux などの UNIX 系OSの市販/オープンソースの豊富なソフトウェア資産に加え、国内外の UNIX系エンジニアリソースを容易に活用できます。また eT-Kernel/POSIX 上で、T-Kernel ベースのアプリケーションも同時に動作させることができます。

「eT-Kernel」 詳細



■ eBinder について
eBinder は、T-Kernel、μITRON をコアとするシステム向けの開発スイートです。従来の T-Kernel/μITRON ソフトウェア開発に不足していた、優れた開発環境を提供します。リアルタイムOSを使ったシステム開発のためにゼロから設計された開発ツール・機能群を使うことで、リアルタイムシステム特有の問題を容易に解決でき、リアルタイムOSを最大限に活用できます。eBinder は、C/C++ コンパイラを含む各種開発ツール群と、あらゆる組込みソフトウェアのベースとなるターゲットプラットフォームを構成するモジュール群があわせて提供されます。

「eBinder」 詳細



■ イーソル株式会社について
 イーソル株式会社は 「Inside Solution」 をブランドスローガンに、1975年の創業以来、組込みソフトウェア業界、および流通・物流業界で実績を重ねて参りました。ユビキタス社会を内側から支える技術者集団として、お客様の満足を第一に、開発、販売からサポートまで一貫したサービス、そしてトータルソリューションを提供しております。弊社は創業直後より30年以上にわたって、高信頼かつ高性能の組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアを自社開発、販売し、デジタルカメラなどの情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムにいたるまで、数多くの組込みシステムに採用いただいています。さらに、顧客様のシステムに特化した組込みアプリケーション開発やコンサルテーションも創業時より行っており、これら様々な規模のシステム開発実績による技術とノウハウの蓄積を背景としたサービスは、多くの顧客企業様より高いご信頼をいただいております。また、組込み技術の応用市場としての流通・物流業界においても、指定伝票発行用車載プリンタ、耐環境ハンディターミナル、冷凍庫ハンディターミナルなどの製品企画および販売を行い、高い評価をいただいております。

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