2011年4月5日
イーソル株式会社

イーソルのリアルタイムOS 「eT-Kernel」 と開発ツールが、富士通セミコンダクター社の車載機器向け画像表示 LSI のソフトウェア開発キットに標準採用


イーソル株式会社 (本社:東京都中野区、代表取締役社長:澤田 勉、以下イーソル) は、イーソルが開発・販売を行うT-Kernel拡張版リアルタイムOS 「eT-Kernel」 と開発ツール 「eBinder」 が、富士通セミコンダクター株式会社 (本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:岡田 晴基) が開発した ARM(R) Cortex(TM)-A9 コア搭載の車載機器向け画像表示 LSI 「MB86R11」 に対応し、同社が開発・提供する MB86R11 向けソフトウェア開発キットに標準採用されたことを発表します。車載分野で多数の採用実績をもつ eT-Kernel と eBinder の利用により、デジタルダッシュボードやカーナビ、運転手の視覚補助を行う 「全周囲立体モニタシステム(注1)」 などの車載表示システムを、高いリアルタイム性と信頼性を実現しながら、短期間、低コストで開発できます。

MB86R11 は、ARM Cortex-A9 コアを搭載しており、4つのビデオ入力、最大3つのディスプレイ出力と高速2D/3D描画機能を持つほか、車載ネットワークである CAN、USB、Ethernet などの車載 LSI で必要とされるさまざまな周辺インターフェースを集約した1チップ・システム LSI です。近年、車載画像表示機器には、従来スピードメーターや燃料残量などを表示していたクラスターディスプレイに地図映像を表示したり、車両情報や周辺情報などを高品質の画像で分かりやすく運転手に伝えたりといった、高品位なグラフィックス表示や、高いリアルタイム性、信頼性を必要とする機能が求められるようになってきました。MB86R11 の利用により、グラフィックスを使用してさまざまな情報を表示するデジタルダッシュボードや、車両の前後左右に取り付けたカメラで撮影した映像をリアルタイムで処理して一つの画面に表示し、自動車の全周囲を任意の視点から確認できるようにする全周囲立体モニタシステムなど、運転シーンに応じた情報を運転手に分かりやすく伝達することが可能になります。

eT-Kernel は、その優れたリアルタイム性と高い信頼性により、カーナビやカーオーディオなどの車載機器への採用実績が多数あります。今回 MB86R11 上への移植が完了したのは、eT-Kernel の中でも、フットプリントが小さく優れたリアルタイム性を持つ 「eT-Kernel/Compact」 です。eT-Kernel には、POSIX 仕様準拠リアルタイム OS を含む、システム規模と用途にあわせた4つのプロファイルがあるほか、マルチコアプロセッサ利用時には 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 を提供できるため、将来、使用するプロセッサを変更する場合にも、ソフトウェア資産の共通化により効率的な開発ができます。さらに eT-Kernel は、ARM Cortex-A9 コアに搭載された、マルチメディア/信号処理アルゴリズムを高速化する ARM NEON (TM) テクノロジー(注2)に対応しているため、オーディオ、ビデオ、3Dグラフィックスなどの高いマルチメディア機能を必要とする機器に最適です。また eT-Kernel に特化した eBinder は、リアルタイム OS を使うシステム開発のためにゼロから設計された開発ツールです。リアルタイムシステム特有の問題を容易に解決できるため、開発者の負担を軽減し、開発効率を向上させることができます。eT-Kernel と eBinder は、イーソルのソフトウェアプラットフォーム 「eCROS」 の主要な構成要素です。eCROS には、eT-Kernel と eBinder のほかに、各種ミドルウェア、プロフェッショナルサービスが含まれます。

今後、市場のニーズに応じ、MB86R11 内蔵コントローラ向けのネットワークやファイル、USB 関連のドライバ、各種ミドルウェアの開発を予定しています。また、プロトタイピングに適した新ソフトウェアプラットフォーム 「eT-Kernel SDK」 も MB86R11 をサポートする予定です。これにより、洗練された GUI やオーディオ機能などを、より簡単に、より早く実現できるようになります。

注1) 全周囲立体モニタシステム:株式会社富士通研究所が開発した、運転手の視界補助向けに車両全周囲を任意の視点でリアルタイムに表示する映像処理技術。

注2) ARM NEON テクノロジー:ARM Cortex-A シリーズのプロセッサに対応する128ビット SIMD (Single Instruction, Multiple Data) アーキテクチャ拡張機能。ビデオ・エンコード/デコード、2D/3Dグラフィックス、オーディオ/ボイス/スピーチ処理、画像処理などのマルチメディア/信号処理アルゴリズムを高速化する。

富士通セミコンダクター株式会社 マイコンソリューション事業本部 自動車事業部長 
布施 武司 様 のコメント
「イーソルが、業界トップクラスのグラフィックス表示性能を持つ 「MB86R11」 をサポートしたことを歓迎します。イーソルの eT-Kernel は、「MB86R11」 の前モデルである 「MB86R01」 での実績に加えて、多くの車載機器での採用に裏付けられた優れたリアルタイム性と信頼性があるため、安心して採用することができました。また、リアルタイム OS として、いち早く ARM CortexA9 コアに対応していたという高い技術力も決め手になりました。「MB86R11」 と eT-Kernel および eBinder を含むソフトウェア開発キットの組み合わせにより、高品位なグラフィックス表示を行う車載機器開発の効率化を実現できます。」

イーソル株式会社 常務取締役エンベデッドプロダクツ事業部長 上山 伸幸 のコメント
「MB86R11 向けソフトウェア開発キットの標準リアルタイム OS として eT-Kernel を採用していただき、大変光栄です。近年、車内外の情報を表示する車載機器が増えてきており、運転手にわかりやすく伝達するための高品位なグラフィックス表示が要求されています。それらの実現には、高い表示性能を持つ LSI はもちろん、その性能を十分に活かすための高いリアルタイム性と信頼性を持つ OS の利用が不可欠です。イーソルは、車載機器をはじめとした幅広い分野での多数の採用実績で得た経験とノウハウをベースに、富士通セミコンダクターとの連携のもと、車載機器向けのソフトウェア開発を包括的に支援します。」

▼ eT-Kernel 詳細 : http://www.esol.co.jp/embedded/et-kernel.html
▼ eBinder 詳細 : http://www.esol.co.jp/embedded/ebinder.html



<補足資料>

■ eT-Kernel について
eT-Kernel は、リアルタイム OS ベンダーであるイーソルがこれまで μITRON で培ってきたノウハウと技術をもとにして、T-Engine フォーラムが配布するオープンソースの T-Kernel に性能面・機能面で改良・拡張を加えた T-Kernel の拡張版です。システムの高速起動を可能にする 「高速ブート」、複数ファイルシステムの透過アクセスを可能にする論理ファイルシステム (LFS)、システム稼動中の問題解析を支援する 「例外マネージャ」 などの多くの拡張機能を実装しています。マルチコア対応版 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 では、独自のスケジューリング技術 「ブレンドスケジューリング」 により、ひとつのシステム内で SMP 型プログラムと AMP 型プログラムを混在させられるほか、システム保護技術 「メモリパーティショニング」 により、マルチコアシステムの信頼性と品質確保を支援します。eT-Kernel には、さまざまなシステム規模と用途をカバーするスケーラブルな4つのプロファイルがあります。μITRON と近い構成を持つ μITRON からの移行に最適な 「eT-Kernel/Compact」、eT-Kernel/Compact をベースに T-Engine 標準のデバイスドライバが付属した 「eT-Kernel/Standard」、メモリ保護機能とプロセスモデルをサポートする大規模開発に最適な
eT-Kernel/Extended」、およびPOSIXに準拠した 「eT-Kernel/POSIX」 です。それぞれのプロファイル上で構築したソフトウェアを共通化したプロダクトライン型ソフトウェア開発も容易です。eT-Kernel/POSIX は仕様で規定されているほとんどの800個近い POSIX API を実装しており、UNIX プログラミングでよく利用される fork、pthread、シグナルなどの機能も含みます。このため、Linux などの UNIX 系 OS の市販/オープンソースの豊富なソフトウェア資産に加え、国内外の UNIX 系エンジニアリソースを容易に活用できます。また eT-Kernel/POSIX 上で、T-Kernel ベースのアプリケーションも同時に動作させることができます。

「eT-Kernel」 詳細



■ eBinder について
eBinder は、T-Kernel、μITRON をコアとするシステム向けの開発スイートです。従来の T-Kernel / μITRONソフトウェア開発に不足していた、優れた開発環境を提供します。リアルタイム OS を使ったシステム開発のためにゼロから設計された開発ツール・機能群を使うことで、リアルタイムシステム特有の問題を容易に解決でき、リアルタイム OS を最大限に活用できます。eBinder は、C/C++ コンパイラを含む各種開発ツール群と、あらゆる組込みソフトウェアのベースとなるターゲットプラットフォームを構成するモジュール群があわせて提供されます。

「eBinder」 詳細



■ eCROS について
eCROS は、イーソルのコア技術を注入したリアルタイム OS をベースとするソフトウェアプラットフォームです。eCROS により、ソフトウェア共通化によるコスト削減および開発期間短縮と、システムの信頼性確保を支援します。マルチコアプロセッサもサポートする T-Kernel 拡張版 「eT-Kernel」 と μITRON4.0 仕様準拠 「PrKERNELv4」 を中心に、開発ツール 「eBinder」、ネットワーク/ファイルシステム/USB/グラフィックスなどの豊富なミドルウェアに加え、製品サポートや受託開発などを含むプロフェッショナルサービスで構成されています。動作検証があらかじめ済んでいるので、チューニングやカスタマイズなどの必要なく、すぐに動作します。ソフトウェアだけでなく、ニーズに合わせたプロフェッショナルサービスをあわせてご提供することで、開発者がアプリケーション開発に専念できる環境を作ります。eCROS は、カーナビやデジタル家電に加え、航空・宇宙分野、FA機器、OA機器など幅広い分野で多くの採用実績があります。

「eCROS」 詳細



■ イーソル株式会社について
イーソル株式会社は 「Inside Solution」 をブランドスローガンに、1975年の創業以来、組込みソフトウェア業界、および流通・物流業界で実績を重ねて参りました。ユビキタス社会を内側から支える技術者集団として、お客様の満足を第一に、開発、販売からサポートまで一貫したサービス、そしてトータルソリューションを提供しております。弊社は創業直後より30年以上にわたって、高信頼かつ高性能の組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアを自社開発、販売し、デジタルカメラなどの情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムにいたるまで、数多くの組込みシステムに採用いただいています。さらに、顧客様のシステムに特化した組込みアプリケーション開発やコンサルテーションも創業時より行っており、これら様々な規模のシステム開発実績による技術とノウハウの蓄積を背景としたサービスは、多くの顧客企業様より高いご信頼をいただいております。また、組込み技術の応用市場としての流通・物流業界においても、指定伝票発行用車載プリンタ、耐環境ハンディターミナル、冷凍庫ハンディターミナルなどの製品企画および販売を行い、高い評価をいただいております。

イーソル会社情報へ


* ARM は ARM 社の登録商標です。ARM9、ARM11、Cortex、MPCore、RealView、NEON
は ARM 社の商標です。
* eBinder、eParts、PrKERNEL、PrKERNELv4、PrFILE、PrCONNECT、PictDirectは、
イーソル株式会社の登録商標です。
* eCROS、eT-Kernel、PrHTTPD、PrMAIL、PrSNMP、PrUSB、PrPCCARD、PrMTP
はイーソル株式会社の商標です。
* TRON は "The Real-time Operating system Nucleus" の略称です。
* ITRON は "Industrial TRON" の略称です。
* μITRON は "Micro Industrial TRON" の略称です。
* TRON, ITRON, T-Engine, T-Kernel はコンピュータの仕様に対する名称であり、
特定の商品ないしは商品群を指すものではありません。
* 記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。




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