2010年10月18日
イーソル株式会社

イーソル、アプリケーション開発者がすぐに使える新ソフトウェアプラットフォーム「eT-Kernel SDK」 を発表

TRON、POSIX、Qt をはじめとする各種オープン仕様を採用し、高いソフトウェア再利用性を実現
高い信頼性をもつリアルタイムOSをベースに、汎用OSと同等のアプリケーションフレームワークを実現
最適化済みのブートイメージを提供、絵、音、ファイル、ネットワークを利用したプロトタイピングが即座に可能
低価格の評価版を提供

eT-Kernel SDK アーキテクチャ
eT-Kernel SDK アーキテクチャ
(※図をクリックすると拡大図が表示されます。)


イーソル株式会社 (本社:東京都中野区、代表取締役社長:澤田 勉、以下イーソル) は、新ソフトウェアプラットフォーム 「eT-Kernel SDK」 を発表します。eT-Kernel SDK は、カーナビや人工衛星、デジタル家電をはじめとする幅広い分野で多数の実績を持つリアルタイムOS 「eT-Kernel」 をベースに、ノキア社 UI アプリケーションフレームワーク Qt や Adobe(R) Flash(R) Lite(TM) を含むグラフィクス、オーディオ、ネットワーク、ファイルシステム、データベースなどの各ミドルウェアやドライバと開発ツールを統合化したソフトウェアプラットフォームです。信頼性の高いリアルタイムOS 上に、Linux や Windows(R) などの汎用OSと同等のアプリケーションフレームワークを構築し、高い開発効率と表現力を実現しました。TRON/T-Kernel や  POSIX、Qt、OpenGL/ES、OpenVG、Flash など、オープンな技術がメインで構成されていますので、高いソフトウェア再利用性を実現しています。ランタイム側は、時間がかかる各種コンフィギュレーションやビルドまでがあらかじめ完了したブートイメージの形で提供されるため、入手後即座にプロトタイピング開発に着手できます。車載機器や携帯情報端末、マルチメディア機器、OA 機器、FA 機器など、あらゆる組込みシステムのプロトタイプ開発やアプリケーション開発に最適です。プロトタイプ開発に適した利用しやすい低価格の eT-Kernel SDK 評価版を、2010年12月にリリースする予定です。

2010年10月26日に東京ミッドタウン (東京都港区) で開催する イーソルプライベートセミナー 「進化するT-Kernel」 にて、eT-Kernel SDK のコンセプトや技術詳細に関する講演とデモ展示を行います。

T-Kernel は、優れたリアルタイム性能と信頼性に加え、コンフィギュレーションやビルドなどでシステム仕様に合わせた細かな設定ができる柔軟性を特長としています。しかし、各種ミドルウェアやドライバと統合し、機能と性能のトレードオフを図りながらこうした設定作業を行って環境を立ち上げるまでに、時間がかかってしまうのが課題でした。通常、グラフィクスやオーディオ、ネットワーク、ファイルシステム機能などを搭載する、数十人月から数千人月クラスの大規模な新商品開発前には、プロトタイプ開発を行って商品コンセプトの実現性や価値の事前評価を行いますが、特にこうしたプロトタイプ開発では、時間と予算が限られているため、T-Kernel を採用しにくい現状がありました。さらに、T-Kernel 上で動作するオープンソースのミドルウェア資産が UNIX と比べて不足しているため、必要な機能を実現することが主目的のプロトタイプ開発では活用しにくいといった事情も課題となっていました。

eT-Kernel SDK は、こうした課題の解決を目的のひとつとして開発されました。eT-Kernel SDK は、グラフィクス、オーディオ、ネットワーク、ファイル、データベースといった汎用 OS と同等の機能が、各種オープン仕様を活用して実現されています。含まれるOSとミドルウェア、各種ドライバは、プロトタイピングに必要なリアルタイム性能や機能を十分に実現できるようにあらかじめ最適化された形でコンフィギュレーション済みで、さらにOSブートイメージとライブラリのビルドまでが完了しています。このため、開発者はドキュメントに従って作業を進めると、短時間で必要なソフトのインストールやターゲットボードの設定と接続など一連の環境構築が完了し、即座にプロトタイピングに着手できます。プロトタイプ開発におけるターゲットボードへのロードやデバッグ時には、JTAG ICE は不要です。

eT-Kernel SDK のコアとなる eT-Kernel は、Linux やWindows(R) では難しい、システム性能や機能の最適化や品質確保の実現が容易です。高機能システム向けの eT-Kernel SDK に適した POSIX 仕様準拠リアルタイムOS 「eT-Kernel/POSIX」 は、T-Kernel API に加え、POSIX 仕様で規定しているほとんどの、900 以上の POSIX API をサポートしています。単なるラッパーライブラリではなく、T-Kernel 内部に手を入れてチューニングし、性能を損なわずに本格的な POSIX 機能を実現しています。eT-Kernel SDK では、この eT-Kernel/POSIX の高い Linux 互換性により、ITRON 資産や T-Kernel 資産に加え、Linux 資産を容易に再利用できます。さらに、SMP と AMP の混在が可能なマルチコアプロセッサ対応リアルタイムOS 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 の利用により、マルチコア評価が簡単にできます。

また eT-Kernel SDK は、グラフィクスやデータベースなどのミドルウェアが充実しているのが特長のひとつです。特にグラフィクス系では、ノキア社製 UI アプリケーションフレームワーク Qt、Adobe(R) Flash(R) Lite(TM)、Open GL/ES、Open VG グラフィックドライバが統合化されているため、高度な技術や知識が必要な移植にかかる大きなコストをかけずに、即座に評価を開始できます。3D やアニメーション UI など高度なユーザインタフェースを実現できる Qt には、豊富なデモ及びサンプルアプリケーションが付属しますので、それらを活用した Qt の評価も簡単にできます。

eT-Kernel SDK には、eT-Kernel に加え、開発ツール 「eBinder」 と、ノキア社製 UI アプリケーションフレームワーク Qt、Adobe(R) Flash(R) Lite(TM)、エンプレス社製データベース、Open GL/ES、Open VG グラフィックドライバ、イーソル製 TCP/IP プロトコルスタック 「PrCONNECT/Pro」、FAT ファイルシステム 「PrFILE2」、USB ホストスタック 「PrUSB/Host」 などのミドルウェアが含まれます。eT-Kernel SDK リリース時には、まずは ARM11 MPCore(TM) マルチコアプロセッサが搭載されたルネサス エレクトロニクス社製 EC-4260 (NaviEngine-MID) をサポートします。また、プロトタイピングを終えてアプリケーション開発を行う際などに OS やドライバのデバッグが必要なときには、横河ディジタルコンピュータ社製 「adviceLUNA」 や京都マイクロコンピュータ社製 「PARTNER-Jet」 などの JTAG ICE を利用できます。今後、ミドルウェアや半導体・IP、ボードや開発ツールなどの商品を持つ eCROS パートナープログラム のメンバー各社との協業のもと、eT-Kernel SDK を拡張していく予定です。

プロトタイプ開発に適した eT-Kernel SDK 評価版は、198,000円で 90日間利用できます。eT-Kernel SDK 評価版では同期間、他社製ソフトウェアのサポートもイーソルより一本化して提供されます。また、アプリケーション開発でシステムを最適化する際に適したソースコード版 eT-Kernel SDK ソースパッケージも用意します。

イーソルプライベートセミナー 「進化するT-Kernel」 では、eT-Kernel SDK のほか、Android ソリューション 「eSOL for Android」 の講演とデモ展示を行います。さらに、東京大学 坂村 健 氏とノキア・ジャパン社をゲストスピーカーとして招聘します。本セミナーの参加は無料です。

東京大学大学院情報学環教授 工学博士/T-Engine フォーラム 会長 坂村 健 様のコメント
「イーソルは、T-Engine プロジェクトを強力に推進している一社です。今回発表された eT-Kernel SDK により、本来の T-Kernel の利点を生かしながら、Windows(R) や Linux で広く使われている環境が T-Kernel で実現できるようになるため、T-Kernel がより多くの分野で普及していくことを期待しています。」


【半導体・IPパートナー】

アーム株式会社 セールスバイスプレジデント 内海 弦 様のコメント

「eT-Kernel SDK の発表を歓迎します。イーソルは、ARM Connected Community の主要なパートナーの一社として、ARM Cortex-A9 MPCore、ARM Cortex-A8 をはじめとする幅広い ARM コアで豊富な経験と実績があります。eT-Kernel SDK が、ARM コアをベースとした高度な機能が求められる組込みシステムの有効なソリューションとなることを期待しています。」

ルネサス エレクトロニクス株式会社 MCU事業本部 自動車システム統括部長 金子 博昭 様のコメント
「イーソル殿は、カーナビゲーションシステム向け SoC 「EC-4260 (NaviEngine(R)-MID)」 をはじめとするルネサス エレクトロニクス製 SoC 向けのソフトウェア開発を強力に支援する、重要なパートナーの一社です。eT-Kernel のリアルタイム性能や信頼性の高さには定評があります。今回発表された eT-Kernel SDK により、ソフトウェア開発がさらに低コスト化、短期化されることを期待しています。」


【ソフトウェアパートナー】

株式会社SRA 取締役 産業営業統括本部長 望月 直行 様のコメント

「株式会社 SRA は、イーソル社の 「eT-Kernel SDK」 の発表を歓迎いたします。eT-Kernel SDK には、SRA により移植された Qt が組み込まれています。今後も、SRA の Qt におけるノウハウやプロフェッショナルサービスとイーソル社の eT-Kernel を始めとする組込みのノウハウ・サービスを連携させることで、Qt をより多くのお客様へ提供していきたいと考えます。」

株式会社EMPRESS SOFTWARE JAPAN 代表取締役 ディビット チャン 様のコメント
「株式会社 Empress Software Japan は eT-Kernel SDK の発売を心より歓迎いたします。eT-Kernel SDK の豊富なミドルウェア、POSIX API と開発ツールにより短時間、低コストの組込みシステム開発が可能になると期待しております。Empress は、31年目をむかえる北米組込み市場での導入実績 No.1 の組込み用データベースです。この度、eT-Kernel SDK で提供される Empress データベースにより、従来のファイルシステムでは実現できなかった、データ管理とアプリケーションの完全分離、新機能導入や機能追加の容易性、検索、更新などの高速データアクセス、データの整合性の保証などが実現でき、システム開発時間の大幅短縮が可能になります。」


【JTAG ICEパートナー】

京都マイクロコンピュータ株式会社 東京オフィス ゼネラルマネージャ 辻 邦彦 様のコメント

「京都マイクロコンピュータは、長年にわたりイーソル社と協業し 「eBinder」 の ICE オプションとして当社の JTAG ICE 「PARTNER-Jet」 を提供してまいりました。このたび発表された eT-Kernel SDK に、弊社の PARTNER-Jet を組み合わせて使用することにより、ハイエンドの組込み開発者は、より一層効率のよい機器開発が可能になるでしょう。」

横河ディジタルコンピュータ株式会社 エンベデッドプロダクト事業部 事業部長 山田 敏行 様のコメント
「 「eT-Kernel SDK」 の発表おめでとうございます。高性能化する組込み機器を支えている、ソフトウェアは肥大化の一途を辿っています。「eT-Kernel SDK」 は、現在の組込み機器で必須とも言えるミドルウェア群のプラットフォーム化とビルド済みの OS ブートイメージの提供により、ソフトウェア開発工程を前倒し、高品質な製品を早期に市場投入することを可能にすると期待しております。また、リアルタイム性が要求される部分に関しては、弊社の adviceLUNA と組み合わせいただくことで、シームレスな開発スタイルの構築が可能となり、お客様へ一層の価値を提供出来ると確信しております。」



<補足資料>

■ イーソル株式会社について
イーソル株式会社は 「Inside Solution」 をブランドスローガンに、1975年の創業以来、組込みソフトウェア業界、および流通・物流業界において製品・サービスの販売活動をグローバルに展開してまいりました。イーソルはユビキタス社会を内側から支える技術者集団として、自社開発による高信頼かつ高性能の組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアを提供しています。デジタルカメラをはじめとする情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムなど各種の組込みシステムだけでなく、組込み技術の応用市場としての流通・物流業界においても、指定伝票発行用車載プリンタ、耐環境ハンディターミナル、冷凍庫ハンディターミナルなどにも採用されています。さまざまな規模のシステム開発実績による技術とノウハウの蓄積を背景とし、開発、販売からサポートまで一貫してお客様の満足を第一にしたサービスを提供し、多くの顧客企業様より高いご信頼をいただいております。

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■ eT-Kernel について
eT-Kernel は、リアルタイム OS ベンダーであるイーソルがこれまで μITRON で培ってきたノウハウと技術をもとにして、T-Engine フォーラムが配布するオープンソースの T-Kernel に性能面・機能面で改良・拡張を加えた T-Kernel の拡張版です。システムの高速起動を可能にする 「高速ブート」、複数ファイルシステムの透過アクセスを可能にする論理ファイルシステム (LFS)、システム稼動中の問題解析を支援する 「例外マネージャ」 などの多くの拡張機能を実装しています。マルチコア対応版 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 では、独自のスケジューリング技術 「ブレンドスケジューリング」 により、ひとつのシステム内で SMP 型プログラムと AMP 型プログラムを混在させられるほか、システム保護技術 「メモリパーティショニング」 により、マルチコアシステムの信頼性と品質確保を支援します。eT-Kernel には、さまざまなシステム規模と用途をカバーするスケーラブルな 4つのプロファイルがあります。μITRON と近い構成を持つ μITRON からの移行に最適な 「eT-Kernel/Compact」、eT-Kernel/Compact をベースに T-Engine 標準のデバイスドライバが付属した 「eT-Kernel/Standard」、メモリ保護機能とプロセスモデルをサポートする大規模開発に最適な「eT-Kernel/Extended」、および POSIX に準拠した 「eT-Kernel/POSIX」 です。それぞれのプロファイル上で構築したソフトウェアを共通化したプロダクトライン型ソフトウェア開発も容易です。eT-Kernel/POSIX は仕様で規定されているほとんどの 800個近い POSIX API を実装しており、UNIX ログラミングでよく利用される fork、pthread、シグナルなどの機能も含みます。このため、Linux などの UNIX 系OS の市販/オープンソースの豊富なソフトウェア資産に加え、国内外の UNIX 系エンジニアリソースを容易に活用できます。また eT-Kernel/POSIX 上で、T-Kernel ベースのアプリケーションも同時に動作させることができます。

「eT-Kernel」 詳細


* eBinder、eParts、PrKERNEL、PrKERNELv4、PrFILE、PrCONNECT、PictDirect は
イーソル株式会社の登録商標です。
* eCROS、eT-Kernel、PrUSB はイーソル株式会社の商標です。
* TRON は "The Real-time Operating system Nucleus" の略称です。
* ITRON は "Industrial TRON" の略称です。
* μITRON は "Micro Industrial TRON" の略称です。
* TRON, ITRON, T-Engine, T-Kernel はコンピュータの仕様に対する名称であり、
特定の商品ないしは商品群を指すものではありません。
* 記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。




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