当社グループは、当社(イーソル株式会社)、連結子会社(イーソルトリニティ株式会社、平成30年3月フランスに設立した eSOL Europe S.A.S.)、持分法適用関連会社(株式会社オーバス)から構成されており、「組込みソフトウエア事業」と「センシングソリューション事業」の2つを主たる業務としております。
*RTOSについては後記「(1)組込みソフトウエア事業 ①組込みソフトウエア製商品 (ア)RTOS(リアルタイム・オペレーティング・システム)」をご覧ください。
(1)組込みソフトウエア事業
当社グループは、昭和50年の設立以来、組込みソフトウエア事業をその事業基盤としております。
組込みソフトウエア事業の具体的な内容は、国内外の顧客(自動車関連メーカ、デジタル家電メーカ、産業機器メーカ、医療機器メーカ等を含む)に対して、「RTOS(リアルタイム・オペレーティング・システム)の開発・販売」、組込みソフトウエアの受託業務としての「組込みソフトエンジニアリングサービス」、「組込みソフトウエア開発にかかわるコンサルテーション」、「組込みソフトウエア開発のためのツールの販売」、「組込みソフトウエア開発エンジニアの教育」であり、当社と連結子会社イーソルトリニティ株式会社及び連結子会社eSOL Europe S.A.S.が実施しております。これら当社グループの提供するソリューションは、今後の成長を期待しているIoT(Internet of Things)の基盤技術であり、下図のイメージのように、個別の応用市場に特化しない産業横断的な技術要素からなる組込み市場において、様々な顧客層を対象としております。加えて、平成28年には株式会社デンソー、日本電気通信システム株式会社と3社で、当社が成長著しいと考えております自動車向けソフトウエア(車載ソフト)市場に特化した、株式会社オーバスを合弁会社として設立し、日本国内外の自動車メーカや部品メーカへ、製品とサービスの提供を行っております。
なお、当社グループはソフトウエアエンジニアリング会社への開発委託や派遣の受入れ、開発ツールメーカ等からのソフトウエア商品の仕入を行っております。
組込みソフトウエアとは
WindowsやAndroidなどが搭載されたサーバやPC、タブレットなどを除く、コンピュータが搭載された電子機器のことを組込み機器と呼びます。一方で、スマートフォン等の登場により、現在はその境界が曖昧になってきております。そして、組込み機器上で動作するソフトウエアのことを組込みソフトウエアと呼びます。一般的に、組込み機器は長時間動作を要求されたり、自動車の自動運転など人命にかかわる部分を担うこともある関係上、組込みソフトウエアには信頼性や堅牢性、保守性、セキュリティなどの品質で高いハードルが要求されます。加えてハードウエアの制御を行う部分を含むため、知見のない企業からの参入障壁も高くなります。組込みソフトウエアは、様々なモノ、コトがネットワーク化され、それらが協調動作するIoT世界実現のための必須の基盤技術であると当社では考えております。
組込みソフトウエアを理解していただく上で、当社グループの考える組込みソフトウエアの構造を以下に示します。
前出の組込みソフトウエアは、すべて組込み機器内で動作しますが、効率的に高品質な組込みソフトウエアを開発するためには、開発支援のための各種「ツール」や「コンサルテーション」、より高品質な「エンジニアリングサービス」などの支援環境が必要となります。当社グループは、顧客が必要とするこれらの製品やサービスを顧客製品の企画段階から量産開始まで、下図のようにワンストップで提供しております。当社グループは、多くの国内の組込みソフトウエア企業の中で、RTOSやツールなどの自社製のソフトウエアを持っている企業グループであり、エンジニアリングサービスを提供するエンジニアを有する独立系企業グループです。
①組込みソフトウエア製商品
- (ア)RTOS(リアルタイム・オペレーティング・システム)
- 組込み機器向けに特化したオペレーティング・システムで、ネットワーク等の通信機能、ハードディスクやSDカードなどのストレージデバイスにデータを書き込むためのファイル機能や各種デバイスドライバなどを備えています。自社製のソフトウエア製品と仕入れの発生する他社商品の2種類があります。収益モデルとしては、顧客に対して開発に対する使用許諾を与える開発ライセンスと、組込み機器を販売する場合に組込み機器上での使用許諾を与えるロイヤリティ、保守活動のための保守ライセンスの3種類が存在します。いずれも当社グループにおける他の製商品、サービスと比較して、通例、粗利率が高く、エンジニア数に直接には関連しない収益モデルであり、当社グループの成長のためには、この売上規模を大きくすることが重要と考えております。
- (イ)開発支援ツール
- 組込みソフトウエアを設計・開発したり、不具合を取り除いたり、その動作を検証する際に、組込みエンジニアは様々なツール群を利用します。当社グループは自社製、他社製併せ、これらのツールを販売しております。開発支援ツールは特に海外ベンダに席巻されている分野で、日本のソフトウエア産業を強くするためにも、この事業を発展させていきたいと考えております。
開発支援ツールはPCやクラウド上で動作するものですので、ロイヤリティは発生せず、収益モデルは開発ライセンスと保守ライセンスの2種類となります。
②エンジニアリングサービス等
エンジニアリングサービス、エンジニア向けの教育/トレーニング、コンサルティングはすべてプロジェクトベースで顧客に提供(役務提供)しております。また当社グループで最も売上貢献度の高いものがエンジニアリングサービスです。当社グループのエンジニアリングサービスの特徴としては、大企業との直接取引が多いこと、また顧客との取引期間が非常に長く、10年以上継続して取引している企業を多く抱えているということが挙げられます。RTOSとのシナジー効果も高く、RTOSの売上増はエンジニアリングサービスの売上増にも結びつきます。
車載ソフト向けソリューション
前述した当社グループが提供する組込みソフトウエア製商品やエンジニアリングサービス等は、産業横断的に様々な産業で利用される技術基盤ですが、近年、電子化が急速に進展する自動車関連向けの事業として特化したビジネスを展開しております。これは主として持分法適用関連会社である株式会社オーバスで実施しており、当社がライセンスしたソフトウエア製品をベースに、欧州発の車載ソフトウエア規格であるAUTOSAR(オートザー:Automotive Open System Architecture)をカスタマイズし、自動車メーカや自動車部品メーカへ販売しております。同時に車載ソフトのエンジニアリングサービスも実施しております。
[事業系統図]
組込みソフトウエア事業の系統図は次のとおりです。
(2)センシングソリューション事業
センシングソリューション事業は大きく2つのビジネスから構成され、そのすべてを当社で行っております。
1つ目のビジネスは、組込み技術の応用製品として、ニッチ市場向けのハードウエアを開発・販売する物流関連ビジネスです。こちらは主にハム・食品メーカ、冷食/アイスメーカ・卸、倉庫・運送業、ハンディターミナルメーカ、フォークリフトメーカ等を顧客としております。当ビジネスの主たる製商品は、指定伝票発行用車載プリンタ(以下、車載プリンタという。)、常温ハンディターミナル、耐環境ハンディターミナル(eSOL Geminus)、フォークリフト専用端末ホルダ及び販売支援用ソフトウエア(業務用端末用開発支援ツール)であり、食肉などの不定貫商品(荷姿ごとによって重量が違う商品)や冷菓など事前発注されない市場に対してルートセールスマンが使用する複写伝票に印字可能な車載プリンタを中心としたビジネスです。車載プリンタや耐環境ハンディターミナルの開発に関しては、その試作・製造を外部に委託し、当社では製品企画・製造指導と販売のみを行っております。常温ハンディターミナルに関しては、他社製のものを仕入れ車載プリンタと共に販売しております。
2つ目のビジネスは、すでに衰退期に入ったと考えられる車載プリンタのビジネスに替わるものとして平成26年12月より始めたセンサネットワーク関連ビジネスであります。主に自動販売機ベンダや地方自治体・農家・漁業組合等に直接又は仲介会社を通じて営業活動を行っております。自動販売機、牧畜や水田、水産など、いまだにICT(情報通信技術)化が遅れている市場に対して、温度、湿度、CO2、PH、嗅覚、味覚など様々なセンサと当社が培ってきた耐環境技術、センサデータをサーバ上に置いたIoTクラウドシステムを組み合わせることで、効率化、省力化を実現するセンサネットワークシステム(eSOL AGRInk等)を構築するものです。システムがより大規模化、複雑化する際には、組込みソフトウエア事業と協調し、より大きなシナジーを発揮できると考えております。リサーチ段階としての販売実績もすでにございますが、まだ本格的な事業化には至っておりません。
なお、当社グループはハードウエアを販売しておりますが、ファブレスであり、製品の企画設計と販売を行うのみで、製造はすべて外部に委託しております。また、ソフトウエアエンジニアリング会社への開発委託や派遣の受入れ、各種センサメーカ等からの商品の仕入を行っております。
[事業系統図]
センシングソリューション事業の系統図は次のとおりです。