2012年4月25日
イーソル株式会社

早稲田大学を中心に策定された、マルチコアプロセッサ向け並列プログラムのソフトウェア標準 「OSCAR API」 の評価環境に、イーソルのマルチコア対応リアルタイムOS 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 が採用


イーソル株式会社 (本社:東京都中野区、代表取締役社長:澤田勉、以下イーソル) は、早稲田大学 理工学術院の笠原博徳教授のグループが産学連携のもと策定して本日発表した、高速・低消費電力動作を可能にするマルチコアプロセッサ向け並列プログラムの世界初のソフトウェア標準 「OSCAR API 2.0」 および OSCAR API で記述された並列プログラムを自動生成する 「早稲田大学OSCAR並列化コンパイラ」 (以下、OSCAR並列化コンパイラ) の評価環境として、イーソルのマルチコア対応リアルタイムOS 「eT-Kernel Multi-Core Edition」 と開発環境 「eBinder」 が採用されたことを発表します。

eT-Kernel Multi-Core Edition がもつ Linux との互換性の高さにより、OSCAR並列化コンパイラで自動生成された Linux 向け並列プログラムの移植と動作確認が短時間で完了しました。3コアが搭載されたルネサス エレクトロニクス社製 「EC-4260(NaviEngine(R)-MID)」 と eT-Kernel Multi-Core Edition の環境で評価用並列プログラムを実行した際、1コアで実行したときと比べて、2.9倍高速化したことが確認されています。eT-Kernel Multi-Core Edition によるオーバーヘッドはほとんど影響を与えずに、OSCAR並列化コンパイラの優れた並列化技術が実証されました。また、評価プログラムの実行時間の計測には、eBinder のシステム解析ツールが利用されました。

イーソルは、早稲田大学グリーン・コンピューティング・システム研究機構アドバンストマルチコアプロセッサ研究所の招聘研究員として、同研究所内に設置されたマルチコア・メニーコア・アーキテクチャ・アプリケーションAPI委員会で進められた OSCAR API 2.0 の策定に参画しました。また、イーソルの 「eCROSアカデミックプログラム」 を通じて eT-Kernel Multi-Core Edition および eBinder をライセンスし、OSCAR API および OSCAR並列化コンパイラの TRON 環境における性能評価に貢献しました。イーソルは、マルチコア向けリアルタイムOSのリーディング企業として、将来のメニーコアを見据えながら、産学官連携と、マルチコア向けリアルタイムOSの研究・開発に積極的に取り組んでいます。

OSCAR API は、情報家電や車載制御機器、医療機器などの組込み機器からスーパーコンピュータまで幅広く使われる、各種マルチコア、メニーコア、共有メモリ型マルチプロセッサ上で、高速かつ低消費電力で並列プログラムを動作させることができる API です。OSCAR API で記述された並列プログラムは、C言語および Fortran で作成されたプログラムから、OSCAR並列化コンパイラを使用して自動生成されます。http://www.kasahara.cs.waseda.ac.jp/ にて、本APIの仕様書などが無料で公開されています。

eT-Kernel Multi-Core Edition は、2006年のリリース以来、カーナビゲーションシステムをはじめとするさまざまな組込みシステムで採用実績をもつ、マルチコア対応SMP型リアルタイムOSです。独自の 「ブレンドスケジューリング」 技術により、ひとつのOS上で、高いスループットを達成するSMPのメリットと、シングルコア向けソフト資産の再利用やリアルタイム性の保証を可能にするAMPのメリットの両方を実現できます。さらに、時間保護技術 「eT-Kernel Temporal Partitioning」 とメモリ保護技術 「eT-Kernel Multi-Core Edition Memory Partitioning」 をあわせて用いることで、マルチコアシステムの高い信頼性を確保できます。eT-Kernel Multi-Core Edition は2つのオープン仕様をサポートしており、T-Kernel および T-Kernel/Standard Extension が提供する標準APIと、POSIX 仕様準拠のAPIを提供しています。eT-Kernel Multi-Core Edition と緊密に統合された eBinder は、マルチコア向けソフトウェア開発で重要なマルチプログラミングと、複雑なマルチコアシステムのデバッグや解析を強力にサポートする様々なツールを提供します。eBinder の利用により、高品質なマルチコア向けソフトウェアを効率的に開発できます。

イーソル株式会社 常務取締役エンベデッドプロダクツ事業部長 上山 伸幸 のコメント
「マルチコアプロセッサを最大限活用するには、ソフトウェア並列化の質をいかに高めるかが重要な要素のひとつですが、手作業による並列化はその複雑性により、難易度が高いのが実情です。高い並列化技術が実証済みで無償で利用できる OSCAR API により、状況が大きく改善され、マルチコアプロセッサの活用がより一層進むものと期待しています。その評価環境のひとつとして、イーソルの eT-Kernel Multi-Core Edition と eBinder が採用されたことは光栄です。今後もイーソルは、マルチコア向けリアルタイムOSのリーディング企業として、産学官連携や、eCROSアカデミックプログラムを通じた教育・研究機関への協力を積極的に進め、その最新技術と研究成果をイーソル製品に還元しながら、さらなるマルチコア向けOSの進化を図っていきます。」


<補足資料>

■ eT-Kernel Multi-Core Edition について
eT-Kernel Multi-Core Edition は、マルチコアプロセッサを使う組込みシステムのためのSMP型リアルタイムOSです。独自の 「ブレンドスケジューリング」 技術により、ひとつのシステム内で、SMP型/AMP型が混ざった複数個のプログラムを混在させることができます。これにより開発者は、シングルコアプロセッサ利用時の資産やノウハウのそのまま再利用しながら、マルチコアプロセッサの性能を最大限に生かしたプログラムを開発することができます。「Single Processor Mode(SPM)」 と 「True SMP Mode(TSM)」 をベースとする4つのスケジューリングモードを用意しています。プログラムによって適切なモードを選択することで、高いスループットの実現などのSMP型プログラムのメリットと、リアルタイム性の確実な保証やソフトウェア資産の再利用性といったAMP型プログラムが持つメリットの、両方をひとつのシステム内で実現できます。

「eT-Kernel Multi-Core Edition」 詳細



■ eBinder について
eBinder は、T-Kernel、μITRON をコアとするシステム向けの開発スイートです。従来の T-Kernel / μITRON ソフトウェア開発に不足していた、優れた開発環境を提供します。リアルタイムOS を使ったシステム開発のためにゼロから設計された開発ツール・機能群を使うことで、リアルタイムシステム特有の問題を容易に解決でき、リアルタイムOS を最大限に活用できます。eBinder は、C/C++コンパイラを含む各種開発ツール群と、あらゆる組込みソフトウェアのベースとなるターゲットプラットフォームを構成するモジュール群があわせて提供されます。

「eBinder」 詳細



■ イーソル株式会社について
イーソル株式会社は 「Inside Solution」 をブランドスローガンに、1975年の創業以来、組込みソフトウェア業界、および流通・物流業界で実績を重ねて参りました。ユビキタス社会を内側から支える技術者集団として、お客様の満足を第一に、開発、販売からサポートまで一貫したサービス、そしてトータルソリューションを提供しております。弊社は創業直後より30年以上にわたって、高信頼かつ高性能の組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアを自社開発、販売し、デジタルカメラなどの情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムにいたるまで、数多くの組込みシステムに採用いただいています。さらに、顧客様のシステムに特化した組込みアプリケーション開発やコンサルテーションも創業時より行っており、これら様々な規模のシステム開発実績による技術とノウハウの蓄積を背景としたサービスは、多くの顧客企業様より高いご信頼をいただいております。また、組込み技術の応用市場としての流通・物流業界においても、指定伝票発行用車載プリンタ、耐環境ハンディターミナル、冷凍庫ハンディターミナルなどの製品企画および販売を行い、高い評価をいただいております。

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