2010年9月9日
イーソル株式会社

組込みシステム向け FAT ファイルシステムの電源断対応機能 「PrFILE2 FAT Safe」 をリリース

~ 車載機器やバッテリ駆動機器における突然の電源断でも、
ファイルシステムの信頼性を確保 ~

イーソル株式会社 (本社:東京都中野区、代表取締役社長:澤田勉、以下イーソル) は、FAT ファイルシステムの電源断対応機能 「PrFILE2 FAT Safe」 を開発し、リリースしたことを発表します。イーソルの組込みシステム向け FAT ファイルシステム 「PrFILE2」 と組み合わせて利用することで、予期せぬ電源断やメディア抜去などで、ファイルシステムに不整合が生じても復旧できます。これまで実現が難しかった FAT ファイルシステムの電源断対応により、PC とファイルデータの互換性が必要な機器において、信頼性の高いファイルシステムの構築が可能になりました。また PrFILE2 FAT Safe は、組込み機器のニーズに合わせてファイルシステムの保護に重点を置いているため、データの保護まで行う電源断対応ファイルシステムと比べて、優れた高速性を確保しています。カーナビをはじめとする電源供給が不安定な環境で使用される車載機器や、デジタルカメラなどのバッテリ駆動のデジタルメディア機器に最適です。

リムーバブルメディアや USB などを使用して、PC とデータをやり取りする多くの組込み機器では、Windows(R) に採用されている FAT ファイルシステムが採用されています。たとえばカーナビには、PC 上で取得した音楽や地図データを、SD メモリカード経由で機器内のハードディスクに取り込んで、再生、表示するという機能を持っているものがあります。こうした FAT ファイルシステムを採用した組込み機器で、急に電源供給が停止したり、ユーザにより不意にメディアが抜き出されたりすると、ファイルシステムの管理領域に不整合が起こり、メディアへのアクセスができなくなったり、すでにあるデータを上書きしてしまったりすることがあります。

こうした問題に対応するため、PrFILE2 FAT Safe は、電源の供給が停止する直前のファイルシステム管理情報を保存しておく仕組みを持っています。そのため、ファイル操作中に電源の供給が停止した場合は、電源断発生前の復旧可能なポイントまで、ファイルシステムを復旧させることが可能です。たとえば書き込み中に電源断が生じた場合、再度電源を入れた際に復旧機能を使うことにより、書き込みを開始する前のメディア状態を再現することができます。また、復旧後のメディアは、PrFILE2 FAT Safe 専用のフォーマットではなく、FAT フォーマットのままなので、PC との互換性は保たれます。さらに、電源断対策を行う前に、メディアを改めてフォーマットする必要はないため、メディア内にあるデータはそのまま利用できます。

PrFILE2 FAT Safe は、イーソルの FAT ファイルシステム 「PrFILE2」 のオプション機能として開発されました。従来の PrFILE2 も、電源断やメディアの抜去によるファイルシステムの破壊を最小限に抑える機能を持っていましたが、PrFILE2 FAT Safe には、ファイルシステムが破壊された場合の復旧機能が追加されており、電源断への対応が強化されています。また、組込み機器で使用されるファイルシステムでは、電源断発生時のデータ保護まで要求されることは少ないため、PrFILE2 FAT Safe は、ファイルシステム管理情報の保護に重点をおいた仕様になっています。これにより、データ保護を行う電源断対応ファイルシステムと比べて高速性を確保できるため、これまでパフォーマンスへの懸念から電源断対応ファイルシステムを使用できなかった機器でも、電源断対策を行うことができます。

PrFILE2 FAT Safe は、イーソルのソフトウェアプラットフォーム 「eCROS」 に統合化されています。eCROS は、T-Kernel/μITRON ベースのリアルタイム OS、開発ツール、USB スタックやネットワークプロトコル、GUI などの各種ミドルウェア、プロフェッショナルサービスから構成されています。eCROS を活用することで、ソフトウェアプラットフォーム構築に手間をかけることなくアプリケーション開発に注力でき、競争力のある信頼性の高い商品を短期間、低コストで開発することができるようになります。また eCROS は、これまでにさまざまな車載機器やデジタルメディア機器で採用実績があります。これらの実績もとに得た経験とノウハウを反映したeCROSを採用することにより、高品質を実現できます。

PrFILE2 FAT Safe は、FAT32 ファイルシステムに対応しています。今後、exFAT にも対応予定です。

▼ PrFILE2 紹介ページ : http://www.esol.co.jp/embedded/prfile2.html

イーソル株式会社 常務取締役エンベデッドプロダクツ事業部長 上山 伸幸 のコメント
「組込み機器で扱うデータの種類の多様化と大容量化に伴い、その重要性も増しています。ファイル操作中の電源断により、データが破壊されてしまう事態が起こると、その影響は多大です。車載機器やバッテリ駆動型のデジタルメディア機器など、電源供給が不安定な環境で使用される組込み製品は、特に電源断に耐えうる仕組みが要求されます。PrFILE2 FAT Safe により、これまで難しかった FAT ファイルシステムの電源断対策が可能になります。イーソルは、PrFILE2 FAT Safe が統合化されたソフトウェアプラットフォーム eCROS の提供を通じ、高い信頼性を備えた組込み製品の、短期間・低コストでの開発を包括的に支援していきます。」



<補足資料>

■ PrFILE2 について
PrFILE2 は、FAT12/16/32、VFAT をサポートした FAT ファイルシステムです。ファイルポインタの高速な後方シーク機能や、電源断やメディアの抜去によるファイルシステムの破壊を最小限に抑える機能など、デジタル家電製品に必須の機能が多く搭載されています。さらに、多言語対応や、文字コードの動的変更機能、UNICODE 対応オプションなど、海外市場向け製品に必要な機能をサポートしています。PrFILE2 は、コンパクトフラッシュ、SDカード、Memory Stick、NAND フラッシュメモリを始め、豊富なメディアドライバを取り揃えています。

「PrFILE2」 詳細




■ eCROS について
eCROS は、イーソルのコア技術を注入したリアルタイム OS をベースとするソフトウェアプラットフォームです。eCROS により、ソフトウェア共通化によるコスト削減および開発期間短縮と、システムの信頼性確保を支援します。マルチコアプロセッサもサポートする T-Kernel 拡張版 「eT-Kernel」 と μITRON4.0 仕様準拠 「PrKERNELv4」 を中心に、開発ツール 「eBinder」、ネットワーク/ファイルシステム/USB/グラフィックスなどの豊富なミドルウェアに加え、製品サポートや受託開発などを含むプロフェッショナルサービスで構成されています。動作検証があらかじめ済んでいるので、チューニングやカスタマイズなどの必要なく、すぐに動作します。ソフトウェアだけでなく、ニーズに合わせたプロフェッショナルサービスをあわせてご提供することで、開発者がアプリケーション開発に専念できる環境を作ります。eCROS は、カーナビやデジタル家電に加え、航空・宇宙分野、FA 機器、OA 機器など幅広い分野で多くの採用実績があります。

「eCROS」 詳細




■ eT-Kernel について
eT-Kernel は、リアルタイムOS ベンダーであるイーソルがこれまで μITRON で培ってきたノウハウと技術をもとにして、T-Engine フォーラムが配布するオープンソースの T-Kernel に性能面・機能面で改良・拡張を加えた T-Kernel の拡張版です。システム起動時間の大幅短縮、高速な割込み応答性、タスク切り替えの高速化、コンフィギュレーションによるメモリフットプリント調整機能、ハードウェア依存部のレイヤー化、モジュール化による移植性の向上などを実現しました。eT-Kernel には、さまざまなシステム規模と用途をカバーするスケーラブルな4つのプロファイルがあります。μITRON と近い構成を持つ μITRON からの移行に最適な 「eT-Kernel/Compact」、eT-Kernel/Compact をベースに T-Engine 標準のデバイスドライバが付属した 「eT-Kernel/Standard」、メモリ保護機能とプロセスモデルをサポートする大規模開発に最適な 「eT-Kernel/Extended」、および POSIX に準拠した 「eT-Kernel/POSIX」 です。それぞれのプロファイル上で構築したソフトウェアを共通化したプロダクトライン型ソフトウェア開発も容易です。

「eT-Kernel」 詳細




■ eBinder について
eBinder は、T-Kernel、μITRON をコアとするシステム向けの開発スイートです。従来の T-Kernel/μITRON ソフトウェア開発に不足していた、優れた開発環境を提供します。リアルタイムOS を使ったシステム開発のためにゼロから設計された開発ツール・機能群を使うことで、リアルタイムシステム特有の問題を容易に解決でき、リアルタイムOS を最大限に活用できます。eBinder は、C/C++ コンパイラを含む各種開発ツール群と、あらゆる組込みソフトウェアのベースとなるターゲットプラットフォームを構成するモジュール群があわせて提供されます。

「eBinder」 詳細


■ イーソル株式会社について
イーソル株式会社は 「Inside Solution」 をブランドスローガンに、1975年の創業以来、組込みソフトウェア業界、および流通・物流業界において製品・サービスの販売活動をグローバルに展開してまいりました。イーソルはユビキタス社会を内側から支える技術者集団として、自社開発による高信頼かつ高性能の組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアを提供しています。デジタルカメラをはじめとする情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムなど各種の組込みシステムだけでなく、組込み技術の応用市場としての流通・物流業界においても、指定伝票発行用車載プリンタ、耐環境ハンディターミナル、冷凍庫ハンディターミナルなどにも採用されています。さまざまな規模のシステム開発実績による技術とノウハウの蓄積を背景とし、開発、販売からサポートまで一貫してお客様の満足を第一にしたサービスを提供し、多くの顧客企業様より高いご信頼をいただいております。

イーソル会社情報へ



* Windows は米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標です。
* eBinder、eParts、PrKERNEL、PrKERNELv4、PrFILE、PrCONNECT、PictDirect は
イーソル株式会社の登録商標です。
* eCROS、eT-Kernel、PrHTTPD、PrMAIL、PrSNMP、PrUSB、PrPCCARD、PrMTP は
イーソル株式会社の商標です。
* TRON は "The Real-time Operating system Nucleus" の略称です。
* ITRON は "Industrial TRON" の略称です。
* μITRON は "Micro Industrial TRON" の略称です。
* TRON, ITRON, T-Engine, T-Kernel はコンピュータの仕様に対する名称であり、
特定の商品ないしは商品群を指すものではありません。
* 記載された社名および製品名は各社の商標または登録商標です。




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