大きな夢を持って「世界のイーソル」をめざそう。 大きな夢を持って「世界のイーソル」をめざそう。

特集

キーマン対談④

今回のキーマン

atsushi hayashida

林田 篤

社外取締役

プロフィール

1987年 4月 日本電装株式会社(現株式会社デンソー)入社
1989年 9月 日本移動通信株式会社出向
1992年 9月 日本電装株式会社通信機器技術部
1995年10月 Nippon DENSO of America, LA Labo.出向
1998年 1月 株式会社デンソー通信技術3部
2008年 7月 同社ITS技術2部室長
2017年 1月 同社ICT技術2部部長
2018年 4月 同社コネクティッド&コックピット事業部副事業部長
2019年 4月 同社コックピットシステム事業部事業部長
2020年 4月 同社理事コックピットシステム事業部事業部長
2021年 4月 同社執行幹部コックピットシステム事業部事業部長
2022年 6月 同社執行幹部電子PF・ソフトウェア統括部統括部長
2023年 3月 当社社外取締役(現任)
2023年 9月 同社執行幹部CSwOソフトウェア統括部部長
ソフトウェア改革統括室長(現任)
見どころ

当社とデンソーは、提携関係にもとづき車載用ソフトウェアのプラットフォームの開発を加速させています。

今回、デンソーの執行幹部CSwOソフトウェア統括部部長 ソフトウェア改革統括室長である林田社外取締役と、当社の長谷川代表取締役社長が、この提携関係の現況から将来的な展望について、今後の両社の緊密な関係強化や未来のモビリティ社会における両社の役割にも目を向けて、ざっくばらんに語り合いました。

01デンソーとイーソルの提携関係の現況と成果

オーバスによる製品開発と人材交流が進展

長谷川
デンソー様とは、以前から業務上の取引や2018年の当社が上場した時の出資に加え、業務及び資本提携の締結(2021年9月)などを通じて、パートナー関係を強化してきました。特に関係が深まったのが、子会社であるオーバスを共同設立(2016年4月)するお話をいただいてからでしたね。
林田様
当時のデンソーにはOSやBSW(ベーシックソフトウェア)など、今後ますます重要となるいわゆる“土台“部分の基盤ソフトウェアの知見強化が必要でした。例えばOEM(自動車メーカー)から求められる車の非機能要件を満足させようとすると、どうしても基盤ソフトウェアの中身に踏み込まざるを得ない。そこで深い知見と技術をもつイーソルとの提携を強化し、オーバスで一緒にものづくりをすることをお願いしたのです。その結果、BSWであるCP(AUTOSAR Classic Platform)やAP(AUTOSAR Adaptive Platform)を開発し、デンソーグループやトヨタグループ等に販売できるようになったのは大きな成果でした。また、イーソルとしてもOSをセットで販売でき、両社にとって良い実績になったのではと思っています。
長谷川
当社としてもそれは非常にうれしい成果でした。近年、車載ECU(Electronic Control Unit)の統合化が進展し、高機能化が求められている中で、さまざまな保護すべき機構を実装したいという要望をいただき、それを実現することができました。また、技術的な側面以外での大きなメリットとして人的交流が進んだことがあります。当社は品質管理の知見が薄かったので、デンソーにお手伝いいただき非常に心強いものがありました。さらに、上層部から現場の部課長クラスまで人的交流が深まりました。さまざまな課題や問題に対し、本音で意見を言い合える人間関係や、人的ネットワークが構築できたことも重要な成果の一つだと思います。
林田様
そうですね。最近は、現場レベルで良い意味でいろいろ衝突するようになりました。かつては違う意見を持っているけれど、遠慮して言わないようにしようということが多分あったのではないでしょうか。それが、この1、2年は両社でかなり本音を言い合える関係になっているのは大変好ましいことだと思います。デンソーでも、サプライヤーさんに「言いたいことは何でも話してくださいね」とお願いしていますが、なかなか本音を言っていただけることは難しいと思っています。それは私たちとOEM様との関係でもまだまだできていないところが多いと思っています。しかしイーソルとは、まだいろいろと課題はあるかもしれませんが、素直に意見をぶつけられることは大変な強みではないでしょうか。はっきり目に見える効果と言えないかもしれませんが、今後の両社の関係において非常に大切なことだと個人的に感じています。
02デンソーから見たイーソルの強みと提携メリット

土台となる高度な技術と積極的な開発姿勢

林田様
イーソルの強みは、先ほども話したようにやはりOSやBSWなどしっかりした土台の技術を有していることです。現在注目されているSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル:ソフトウェアによって自動車の機能がアップデートされることを前提に設計・開発された車)も、こうした知見や経験なしには実現不可能です。
長谷川
そうですね。そこはわれわれも自信を持っている部分です。
林田様
何千万行もあるソフトウェアを、メモリー容量やCPUの制約があるECUの中に全部入れ込んで、求められる機能・性能をすべて成立させるのは、確固たる技術を持っていないとできません。この対応に重要なスキルの一つが、いわゆる基盤ソフト部分のスキルであり、その開発技術とエンジニアを持つイーソルの一番の強みだと思います。デンソーにとっても提携の最大のメリットでもあり、その部分を引き続き強化していただければと期待しています。
長谷川
どうもありがとうございます。あと、技術的な話ではなく、先ほどの話にも関連しますが、イーソルの社員は非常に明るい性格の人間が多いんです。そういう目に見えない企業文化というのも当社のいいところだと思いますね。今はDX化やAI導入などによる業務効率化などが言われていますが、結局仕事をするのは人間です。難しい課題に対してもとにかく前向きにやってみよう、というモチベーションが高いんです。会社としてもその気持ちに応えるために、さらに開発環境を整えるとともに、データに基づいた実効性のある働き方改革、ワーク・ライフ・バランスの充実を進めているところです。
林田様
それは非常に大切なことだと思いますね。「まずやってみよう」という気持ちや姿勢がすごく強いと感じています。デンソーでは大規模なソフトウェアを手掛けることが多いのですが、OEMからの受託開発の経験が長く、自ら提案するソフトウェアエンジニアがまだまだ多くないので、「まずやってみよう」と動くイーソルのエンジニアの皆さんを見習わなければいけないと思っています。また、数少ないAUTOSARのアーキテクトを内部に抱えていることも、社員のモチベーションにつながっているのではないでしょうか。
03モビリティ社会の未来と両社の役割

開発の上流段階から全員で協力

林田様
デンソーでは「DENSO DIALOG DAY 2023」で、従来の「自動車業界のTier1」から、車と社会をつなげる「モビリティ社会のTier1」へと進化することを宣言しました。イーソルとは2023年からPoC(Proof of Concept:概念実証)を行っていますが、その中で提唱されたSDV時代における「DVE+U」(ドライブ・ビークル・エンバイロメント・プラス・ユーティリティ)という考え方に共感しています。その実現に向けて、2026年を目標に、車も含めたモビリティ社会全体の価値最大化を目指していければと考えています。
長谷川
特に最近では、OEMからセキュリティについての要求が高まっていますよね。そういう要望に対してどういう技術で対応すれば良いのか。現状では、例えば「衝突しない車をつくりましょう」という提案をOEMに持っていき「ああ、これはいいね」となると、では機械の部分は例えばデンソーさんがつくってください、それを制御する部分のOSはイーソルでやらせてもらえませんかという分担になるんですね。
林田様
「こういうクルマをつくろう」という発想を起点にクルマづくりを進めていくことが重要で、そのためには、多種多様な地域、お客様を考えた車種展開も考慮した上で、クルマづくりに関わる全員(Tier0、Tier1、Tier2)が各自の得意な知見を集めて、上流から一緒に考えてくことが必要で、そのような動きも進んでいます。
長谷川
そうですね。日本でもクルマづくりに関わる全員が、上流から協力することが重要になっていきます。例えば半導体のベンダー、プラットフォームの開発会社がいて、デンソーのようなTier1があり、当然車をつくるOEMもいます。これらがみんな一緒になって、未来のモビリティ社会がどうあるべきか考えてつくっていこうよという流れが、ようやくやって来つつあると感じます。業界の中でぶつ切りではなく一緒にものづくりをする時代になれば、デンソーもイーソルも重要な役割を果たしていけるものと確信しています。
04オーバス吸収合併の背景と今後の提携関係

これまでの経験を活かし緊密な関係を強化

長谷川
2024年7月に、オーバスがデンソーに吸収合併されることになりました。
林田様
ECUの競争力をさらに上げることが、大きな理由です。これまでは、デンソーがECU要件を基にBSWとして必要な要件を抽出・提示し、オーバスがその内容を確認した上で受託するというやり方でした。単一ECUのように比較的小さいECUであれば、ECU機能とBSW機能の連携が多くなかったので、ECUのプロ、BSWのプロがそれぞれの領域で開発をすれば良かったのですが、統合ECUのように機能が複雑になり、ECUとBSWがしっかりと連携することで、ECUの製品性能を最大限に発揮させることが重要になってきました。それならば、BSWのプロと一緒になって最初からつくった方が良いと考え、ECUの競争力を上げていくためにデンソーとオーバスが合併し、開発の最初から一緒に手掛けることをデンソー側からお願いしました。
長谷川
これまでも、オーバスの仕事は8割がデンソーからの受注でした。しかし、ある一つの顧客だけに集中すると、製品の拡販がなかなかできないのです。拡販できるようにしよう、一方でデンソーにスペシフィックな製品の両方をつくろうとすると手間が結構かかるんです。また、これからもメインの顧客はデンソーであり、今後どういうことを実現したいかをよく理解している人材もたくさんいます。両社の人材交流や提携関係はこれまでに十分進展しており、今では、いつでも両社の社員が直接話し合ってコミュニケーションできる人間関係も構築できたので、オーバスを通さなくても従来通りの協力関係を維持できると考えています。
林田様
そうですね。先日もデンソーだけでは難しい仕事が入った時に、イーソルなら絶対できるだろうとお願いすることが自然な流れで行われており、そこは長谷川社長のおっしゃる通りだと思います。さらにSDVに関するPoCも進んでいる中で、その具現化にはイーソルとの協力は必要不可欠であり、これまで以上にお互いの関係は深まっていくものと期待しています。
長谷川
どうもありがとうございます。これからも両社は緊密に連携して、快適で安全なモビリティ社会の実現に貢献していきます。ステークホルダーの皆様には、引き続き変わらぬご支援のほどよろしくお願いいたします。