大きな夢を持って「世界のイーソル」をめざそう。 大きな夢を持って「世界のイーソル」をめざそう。

特集

キーマン対談企画②

今回のキーマン

hiroshi kondo

近藤 浩

社外取締役

プロフィール

取材当時

1987年 4月 日本電装株式会社(現株式会社デンソー)入社
2012年 1月 同社電子技術2部第1設計室長
2013年 1月 同社電子技術2部担当部長
2014年 1月 同社電子技術3部担当部長
2015年 1月 同社電子技術1部長
2016年 7月 同社電子事業部副事業部長
2017年 1月 同社エレクトロ事業部副事業部長
2018年 4月 同社常務役員エレクトロ事業部長
2019年 4月 同社執行職エレクトロ事業部長
2020年 4月 同社執行職電子プラットフォーム統括部統括部長、及びエレクトロ事業部担当
2021年 6月 同社執行幹部エレクトロ事業部担当、及びAD&ADAS事業部電子領域担当
2022年 1月 同社執行幹部AD&ADAS事業部長(現任)
2022年 3月 当社取締役(現任)
見どころ

業務・資本提携に関する契約を締結した株式会社デンソーから、この度、近藤社外取締役をお迎えすることになりました。
デンソー社から見たイーソルの強み・魅力、そしてイーソルの社外取締役就任の意気込みや今後の展望を存分に語り合いました。

01社外取締役就任の経緯

業務・資本提携に伴うコミュニケーションの強化

長谷川
2021年9月にイーソルはデンソー様と業務及び資本提携を締結し、従来以上に協業による車載用ソフトウェアのプラットフォームの開発を加速することになりました。これに伴って、両社間でより密接な情報交換やハイレベルのコミュニケーションを定期的にはかるため、デンソー様から社外取締役をお迎えすることになり、当社の事業内容にご理解のある近藤氏をご推薦いただきました。
近藤氏
以前からデンソーはイーソルにマイナー出資を行うとともに、ソフトウェアのプロダクトを提供していただく等、業務上の取引があり、さらに子会社のオーバスに共同出資を行う等、パートナー関係にありましたが、今回それをより強化することになります。私自身はデンソーで車載用の電子プラットフォーム開発を統括していたため、社外取締役候補として、まず名前が挙がったのです。
 デンソーでは基本的にハードウェアにソフトウェアをインテグレートしてお客様に提供していますが、私はこれからハードウェアとソフトウェアを分離して別々に求められる時代が来ると考えていました。そこで、ソフトウェア開発力で両社シナジーを出せると考えたこと、さらには私自身もソフトウェアを主力業務とするイーソルのビジネスを学べることを期待し、ぜひやらせてほしいと自分からお願いしました。
 また、さまざまな新しいことにトライできる社風も、私にとってはとても魅力的でした。
長谷川
どうもありがとうございます。デンソー様との長年に渡る取引やオーバスの設立等、今日まで築いてきた両社の関係を評価いただいていることに、会社としても個人的にも大変うれしく思っております。
02業務・資本提携の狙いとイーソルの強み

高度化する機能・性能への対応力と技術力

近藤氏
自動車業界は今CASE(Connected つながる車、Autonomous 自動運転、Shared & Service シェアリングサービス、Electric 電動化)と呼ばれる領域が進展しており、従来のように単独ドメインではなく、複数分野にまたがるクロスドメインで連携したアプリケーションが求められています。
 また、自動車の販売後もソフトウェアを書き換えることによって車の機能を向上させる“most programmable vehicles”の実現に向けた動きも活発化しています。こうした中、電子プラットフォームのアーキテクチャをきっちり構築した上で、ハードウェア特有の部分を隠す必要性があり、そこで威力を発揮するのが、ハードウェアとソフトウェアをうまく分離する機能・性能を提供するイーソルのオペレーティングシステムです。デンソー側としては、イーソルと連携してOS開発を行うことが今回の提携の大きな目的です。さらに、システムとしての機能開発に加え、安全性の担保やセキュリティの強化等にも配慮が高くなっており、イーソルがこうした要求に対応できるのは、多くのエンジニアが自らソフトウェアを開発されているからで、非常に大きな強みだと思います。加えてイーソルは標準化に対する深い知見を持ち、具体的にアクティブに活動しているところも大変魅力的だと思っています。
長谷川
かつての家電製品やいわゆるガラケー等の組込ソフトウェアは、プラットフォーム単体で閉じていたことが課題でした。これからはオープンな標準仕様のOSを独自の機能や性能を引き出すためにカスタマイズして他社と差別化をはかるとともに、アプリケーションについてはどのメーカーでも共通のものが動く仕組みづくりをしていくことが重要になります。当社は設立当初から半導体ベンダー等、国内外のミドルウェアのメーカー各社とコミュニケーションをとってOSを作っており、それらの実績を自動車分野でも活かしていきたいですね。
近藤氏
アプリケーションは車両サイドからの要件で決まりますが、OSのところで様々なインターフェースを取る際に仕様を決めることは、デンソーが比較的得意な部分だと思っています。しかし変化が早い時代にあって、いま見えていることを基準にスタートしたのでは後れをとってしまいます。そこで、将来を見通した時にどうあるべきかをイーソルと一緒に議論することが、提携によるシナジー効果が発揮できる最大のポイントであり、提携のもう一つの大きな目的でした。
長谷川
イーソルには5年後10年後車のモビリティ社会がどうなっているかを想像し、その実現に必要な機能を車載ハードウェアに組込み、具体化できる技術力と経験値があります。一方でデンソー様からは、自動車メーカーが車載用電子プラットフォームに対してどういう考えを持ち、何を求めているのかという情報を頂きながら、そのプロトタイプをいち早く形にして提供できればと考えています。
03社外取締役の役割と今後の協力関係

自動車業界の情報収集と品質の向上に期待

近藤氏
まず技術開発の優先順位を議論したいと考えています。イーソルとして何を大事にすべきか、自動車を優先させるべきかどうか等を話し合ったうえで方向性を決めていきたいですね。
 また、これからも半導体の進化に伴ってソフトウェアも複雑化・大規模化し、開発投資の増加が予測されており、収益を確保するには販売チャネルの拡大が必要になります。
 そこで、自動車業界における多くのTier1企業にパイプを持つデンソーの力を活用し、販売チャネル拡大に貢献していきます。さらに社外取締役の役割として、自動車業界の動向をいち早くキャッチしてお伝えすることも重要だと考えます。
 とはいえ100%確実な情報を把握することは不可能なので、現状ではどの部分の何が不確実であり、例えば何を見ていれば今後の動向がつかめるのかといった情報交換ができればと思っています。
長谷川
OEMさんの5年後10年後の中長期的な方針等については、自動車メーカーとの関係が深いデンソー様の方が、やはり最新情報をよくご存じだと思います。どんな半導体が必要でどのような機能が求められるかといった情報交換をさせていただき、OSにいち早く組込むことでデンソー様に対して貢献していきたいですね。また、例えば今後開発ロードマップを作成する際に、当社だけでは気づけない観点からも助言していただけることは、大変心強いですね。
近藤氏
もうひとつの役割は品質に関するアドバイスです。イーソルでは、これまでも品質管理にちゃんと取り組んで来られたことと思います。しかし、自動車業界に特有の事情等もいろいろとありますので、デンソーが長年経験してきた蓄積をもとに品質管理におけるノウハウや助言をお伝えすることで、さらなる品質向上に貢献したいと考えています。
長谷川
当社もその点は、提携の重要な目的であると捉えています。私自身も当社の品質向上活動に10年以上携わってきましたが、まだまだ十分とは言えずマンパワーも弱いところがあります。デンソー様がお持ちのさまざまな知見を参考にさせていただきながら強化していけたらと期待しております。
04イーソルへの期待と可能性

スピード感のある開発力と環境問題への応用

近藤氏
先ほどの話でも触れた“most programmable vehicles”のように、車載ソフトウェアの進化がますます加速し、それに伴うOSの機能・性能の向上や変化の対応にはスピード感が求められています。こうした流れに遅れることなく追従していくために、開発作業を自社で内製化しているイーソルならではの迅速な対応力に期待しています。また、近年ではアップルやソニーをはじめ、自動車業界以外からも新たなプレーヤーの参入が相次いでおり、グローバルレベルでマーケットを確保し続けるには、デンソーとイーソルとで緊密に連携して戦っていかねばなりません。特にその意味では、我々が一緒に取り組んでいる「Adaptive AUTOSAR」プラットフォームについては、今まさに市場の陣地取りを争っているフェーズにあります。まず自動車業界の中で確固たる地位を固めることを、スピード感を持って最優先にやらねばならず、その点からもイーソルが「AUTOSAR」の仕様策定といった標準化活動に関わっていることは大きな強みになるのではないでしょうか。
長谷川
私もそう思います。「Adaptive AUTOSAR」への取り組みは2、3年ほど前から始まっていましたが、日本のベンダーのスタートは少々遅かったように感じます。今は自動車メーカーも車を売った後にいかに価値を付けていくかを重要視するようになっており、そうすると「Adaptive AUTOSAR」にしっかり対応できない限り、厳しい戦いになるのではないでしょうか。また、そのプラットフォームもワールドワイドで共通化されていなければなりません。デンソー様はグローバルレベルの“キーメーカー”であり、これからもその地位をさらに高められるよう、イーソルもワールドワイドのプラットフォームを提供するベンダーを目指していきたいと思っております。
近藤氏
さらに大きなスケールで考えてみると、世の中では環境問題、カーボンニュートラルが非常に注目されています。ヨーロッパはグリーンディール、アメリカではグリーン・ニューディール政策を打ち出す等、政府主導で動いており、こうした中で日本も積極的にプレゼンスを発揮していく必要があります。しかし、自動車単独で温室効果ガス排出量を減らすにはおのずと限界があり、社会全体のさまざまな分野で取り組まねばなりません。そこで、我々が自動車で培った電子プラットフォームの技術や考え方を他の分野にも応用することで、環境問題の解決に貢献できるのではないでしょうか。
長谷川
まさしくその通りだと思いますね。我々の業界に身近な例でいうと、現在世界中にデータセンターは数多くありますが、その空調にかかる電力がものすごく大きいんです。1台のコンピューターで消費していた電力が、データセンターではその何百倍、何千倍にもなります。一方で、自動車の性能の高度化が進むにつれて消費する電力量が増えていきます。どうすれば低消費電力に抑えていけるかをまず考え、さらに完成したその仕組みを、他分野の社会インフラにも適用することで、新しいビジネスも生まれてくると思います。
 最後に、このたびデンソー様から社外取締役をお迎えすることができて、非常に光栄に思っております。あらためてこの場をお借りして近藤様、そしてデンソー様にお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
近藤氏
これからしっかり汗をかいて働きますので、こちらこそよろしくお願いいたします。