日本企業が歴史的に抱えてきた課題として、技術立国を志しながらも、グローバルに刺さる一手をなかなか打つことができなかったということがあります。個人的にやりきれなかった想いもある中、イーソルにはその果たせなかった夢が実現できるポテンシャルがあると感じています。
自動車がガソリン駆動やハイブリッド型から、仮に将来100%EV(電気自動車)に移行するとしても、駆動系デバイスが変わるだけで基本的にはイーソルの技術の守備範囲には影響がなく、長期的観点での役割は重要かつエッセンシャルであるという位置づけは変わらないと考えられます。むしろ自動運転のソフト開発・システム構築という「車内」の概念を超えて、「車内」と「車外」を結ぶ多岐にわたる通信やセンシング機能の開発、GPSとの連携、クラウド上で広く展開される自動車業界での様々なサービスとの連携といった技術がより求められるようになるでしょう。
私はこうした観点から、イーソルはこれから自動車の世界でMaaS(Mobility as a Service)と呼ばれる概念の実現において、キーとなる「車載組込みソフトのファンダメンタルとなるプラットフォーマー」として業界を牽引する存在になり得る企業であり、この分野で名実ともに世界標準のグローバルなリーダーとして活躍しなければならない星の下に生まれた企業ではないかと考えています。今後はM&A等も含め、さらなる企業規模の拡大を進めて行くことになるであろうと予想しています。
私は、イーソルのトップから従業員の方々全員に対して、常々申し上げたいと思っていたことがあります。「人が『夢』だと言うなら、それでも構わない。『夢』をもって一流企業を目指し、『世界のイーソル』になりませんか!」ということです。ある人は、東証一部上場を果たしたばかりの小規模会社にとって「『夢物語』にすぎない」と一言で片付けるかもしれない。それでも、最初は「夢」として置いておけば良いのです。
私はかつて20年以上前、アメリカ西海岸のシリコンバレー駐在時代に、当時その名がほとんど知られていなかった、まだ未上場の小さなベンチャー企業「Google」に投資する機会がありました。それが今では独自開発技術に裏打ちされた世界企業として「知らない人はいない」ほどの存在になり、現在ではGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)の一角を占める時価総額「100兆円」規模の超巨大企業に成長しています。
残念ながら日本の企業には、こうしたシリコンバレーに見られたような若々しい夢と大志があまり感じられません。またそれを応援しサポートするような仕組みや環境、企業風土も育っていません。今後も「技術立国」として立ち振る舞わなければならないわが国において、さまざまな産業分野・業界を見回しても、世界標準に深く絡んでいる企業・団体がどれだけあるでしょうか。
言うまでもなく、今は「自動車=走るコンピューターの時代」です。その自動車産業界における、先端電子技術のプラットフォームの基本独自技術を持ち、世界標準に絡みつつある日本で数少ない企業として、イーソルは非常に良いポジションにいます。
私はイーソルにこそ「日本発のGAFA」を実現して欲しい。現状に満足することなく、決して小さく小器用にまとまらず、グローバル基準での一流企業へと発展することを目指して、社員がそれぞれの持ち場で、自らリードしてパラダイムシフトを起こしてどんどん進化していってもらいたいし、またそれだけのポテンシャルを持った会社であると確信しています。
長谷川社長もホームぺージ上で、「世界標準への挑戦」と題して「『Made by eSOL』、『Made in Japan』を世界に」という言葉を記されています。長谷川社長のその言葉の底流にあるお気持ちとも、きっと相通じるところがあるのではないかと、私自身はイーソルの長期ビジョンを読み解いています。
従業員の皆さんには、大きな夢をもって『世界のイーソル』となることをめざして頂きたい。それだけの圧倒的なポテンシャルを秘めた企業であると確信していますし、社外取締役として微力ながら少しでもお役に立って貢献できればと考えています。
長谷川社長のコメント
IT業界のさまざまな知見や経営に関する姿勢等を 教えて頂きたく、
社外取締役をお願いいたしました。
当社に対する高い評価とご期待を頂き、ありがとうございます。中井戸様には、これまでのご経験によるIT業界のさまざまな知見や経営に関する姿勢等のアドバイスを頂きたく、社外取締役をお願いいたしました。
取締役会については最初に「自由に忌憚なく意見を言える会社である」というご感想を頂きましたが、これは当社の自由闊達な社風も反映しており、評価を頂いてうれしく思う一方で、やはり私どもでは気づかないようなグローバルな視点や大局的な見地からさまざまなご意見を頂戴し感謝しております。また、将来的に企業規模を拡大していくためには、どのようなガバナンス体制が必要かといった具体的な助言も常に頂けるので大変助かっています。
また「みんなで『夢』を持とう」というご提言については、私自身も同じ志を持っております。社員に向けて呼びかけたこともあり、機関投資向けの説明会等でも、同様の趣旨の話をしたことはあります。これからも世界市場において存在感のある大企業を目指して、一丸となって前進していきたいと思います。
中井戸様もご指摘のとおり、今後ガソリン車からEV等へ、世界レベルで急速に移り変わっていくと予想されますが、当社が作っている車載ソフトウエア製品群やサービス等は、無くなるどころかより重要なものとなり、増加していくと考えられます。その変化にキャッチアップすべく成長スピードを加速するためには、資本の力が必要だったり、他企業とのアライアンスやコラボレーションが求められる場面も出てくるでしょう。当社が世界に向けて事業展開を進めていく上で、中井戸様の知見やご経験を活かして頂くことがあると思いますが、引き続きお力添えをよろしくお願いいたします。
長谷川代表取締役社長と様々なゲストとの対談を通して、株主の皆様に当社へのご理解をより深めていただければ幸いです。